私達歯科衛生士は、患者さんの口腔 環境を守り、管理するとても大切な仕事です。
しかし、残念ながら、多くの歯科衛生士が離職を経験しており、その背景にはさまざまな要因が複雑に絡み合っています。

私自身も、離職を数回経験して今の職場へは15年ほど勤務させてもらっておりますが、多くの同僚や後輩たちの離職を見送ってきました。
今回は臨床経験20年以上の私が離職率の高さと働きやすい職場ついて本音で語ります。ぜひ最後までご覧になって下さい。

今後のキャリアについて、明確に考えられるようなヒントを見つけてもらえたらと思います。
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歯科衛生士の離職率は、決して低いとは言えません。具体的な数値と、私が現場で感じてきたことを交えて紹介します。
就業者数と未就業者数について
厚生労働省の「令和4年衛生行政報告例」によれば、令和4年末時点での就業歯科衛生士数は145,183人であり、前回(令和2年末)の142,760人から2,423人増加しています。
また、「令和2年度」の統計情報を基に厚生労働省が2022年3月14日に開催した「第6回歯科医療提供体制等に関する検討会」の事業報告によると、の歯科衛生士免許登録者数は298,644人 そのうち業務従事者数は142,760人となっており、資格を持ちながら未就業の歯科衛生士が約14万人存在することが示されていました。
離職率の高さについて
日本歯科衛生士会が2020年に実施した「歯科衛生士の勤務実態調査報告書」によると、、
「勤務先を変わったことはない」が 22.2%(前回 24.3%)である。一方、「1 回ある」と「2 回ある」と「3 回ある」と「4 回以上ある」の合計は 76.4%(前回 74.4%)である。
令和 2 年 3 月公益社団法人 日本歯科衛生士会歯科衛生士の勤務実態調査報告書より引用
となっており全体の約8割の歯科衛生士が転職経験があると報告されています。
これは、私が20年間現場で見てきた感覚とも一致します。周りの歯科衛生士を見ていると、一度も転職していない人の方が珍しいと感じます。
さらに、転職経験者のうち55.0%が複数回の転職を経験していることも分かっています。
これは、一度転職しても、理想の職場に出会えず、再び転職を繰り返してしまうケースが多いことを示唆しています。

私も経験がありますが特に20–30代の若手が離職するケースが多いです。

なぜこれほどまでに離職率が高いのでしょうか?
離職を考える背景には、様々な悩みがあります。
ここでは、代表的な悩みとその解決策についてを紹介します。
人間関係
院長や同僚とのコミュニケーション不足、仕事に対する価値観の違いなどが原因で、職場で孤立感を感じたり、ストレスを抱えたりすることがあります。
特に、歯科医院は比較的少人数の職場であるため、人間関係がこじれると、毎日の仕事が苦痛になってしまいます。
私が経験したケースでは、、院長のワンマン経営が原因で、スタッフの意見が全く反映されず、不満が溜まっていったというケースもありました。

「職場の人間関係」を理由に退職するケースはいつの時代も多いですね。
1 コミュニケーションを意識しよう
日頃から、同僚や院長と積極的にコミュニケーションを取るように心がけましょう。
自分の意見や気持ちを伝えるだけでなく、相手の意見や気持ちをしっかりと聞くことが大切です。
2 相談できる相手を見つけよう
職場に相談できる同僚や先輩がいれば、積極的に相談してみましょう。
また、職場の外でも、友人や家族などに相談することで、気持ちが楽になることがあります。
勤務時間
歯科医院の常勤勤務だとどうしても長時間労働になりやすく、加えて休憩時間の不足などが、心身の疲労につながっています。
特に、診療が終わってからの片付け(デンタルクリニックは細かい外科器具や材料が多い為片付けに時間がかかる問題あり!)や、クリニックの定期的な勉強会などは、体力的にきつく、プライベートの時間を確保しづらいという声が多く聞かれます。
1 業務効率の改善を提案するしてみよう
無駄な作業がないか、効率の悪い作業はないかなどを見直して、業務効率を改善するための提案を同僚等にしてみましょう!
例えば、器具の配置を見直したり、作業手順を改善したりすることで、業務時間を短縮できる可能性があります。
2 時間マネジメントを意識しよう
業務時間内に効率的に作業を進めるために、時間マネジメントを意識しましょう。
例えば、1日のスケジュールを立てて、優先順位をつけて作業を進めたり、タイマーを使って作業時間を区切ったりすることで、時間管理を徹底することができます。

私自身も訓練する事で割と身に付きました。意識することはとっても大切です!
お給与
お給料に対する不満は、離職理由の中でも大きな割合を占めます。
勤務地、経験、勤務形態など多くの要因に左右されますが、上記で述べたように歯科衛生士は拘束時間が長い割にはあまり高給ではありません。
以下は、日本全国の歯科衛生士の年収と時給の分布を示した表です。
年収の分布
年収の範囲 | 割合 (%) |
---|---|
130万円以上 300万円未満 | 31.3% |
300万円以上 400万円未満 | 35.3% |
時給の分布
時給の範囲 | 割合 (%) |
---|---|
1,100円以上 1,300円未満 | 27.3% |
1,300円以上 1,500円未満 | 19.3% |
1,500円以上 1,700円未満 | 18.2% |
「令和2年歯科衛生士の勤務実態調査報告(https://www.jdha.or.jp/pdf/outline/r2-dh_hokoku.pdf)」参照
これらのデータは、日本の歯科衛生士の収入水準を示しており、多くの歯科衛生士が年収300万円以上400万円未満の範囲に集中しています。
また、時給においても1,100円以上1,300円未満が最も高い割合を占めています。

今は最低賃金が上がりもう少し高めのようですね。
東京都であれば最低時給が2,000円以上のクリニックも見られます。
1 自分の市場価値を知ろう 自分の経験年数やスキル、地域における給与水準などを把握することで、自分の市場価値を客観的に判断することができます。
転職サイトや求人情報誌などを参考に、情報収集を行うと良いです。
2 給与交渉を行ってみよう 勇気を出して給与交渉をしてみるのも一つの方法です。
自分の実績や貢献度などを具体的に伝え、給与アップを交渉してみましょう。(言ったもん勝ちの気持ちで交渉してみましょう!)
3 スキルアップで市場価値を高めよう 専門的な資格(認定歯科衛生士など、、)を取得したり、セミナーや研修会に参加したりすることで、スキルアップを図り、市場価値を高めることができます。
市場価値が高まれば、院長と給料交渉もしやすいですし、もし難しければ、より高い給与を提示してくれる職場への転職も可能になります。
結婚・出産・育児などライフスタイルの変化

結婚を機に、通勤時間や勤務日数を見直さざるを得なくなりました。

出産後、職場復帰しましたが、子供の都合に理解を示してくれず居づらくなってしまい辞めたいです。
歯科衛生士は女性が中心の職場ということもあり、ライフスタイルの変化がキャリアに大きく影響しやすい職種です。
特に、結婚、出産、育児といったライフイベントは、仕事との両立を考える上で大きな転機となります。

介護と仕事の両立に疲れ、仕方なく退職を選びました。
また、親の介護問題も大きな課題の1つです。

私自身も早くに母親が難病で介護生活を余儀なくされ、職場に迷惑をかけてしまった経験があります。
1 職場の制度を確認しよう 産休や育休、時短勤務などの制度が整っているか、まずは院長に確認しましょう。
2 家族や周囲の協力を得られるように話合いをしよう 仕事と育児や介護の両立は、一人で抱え込まずに、家族や周囲の協力を得ることが大切です。
また、地域の支援サービスに問い合わせをしてサービスを利用出来たりします。
歯科業界の最近の動向

こちらの事例はここ数年で私が多く耳にしている事です。

朝出勤したらいきなり院長に「来週から経営方針が変わって、新事業の担当者と面接がある」と言われ困惑しています。
今まで何事も問題なく仕事をしていたし何の前触れもない院長からの報告、、、
今後が心配です。
こちらは最近歯科衛生士の仲間から聞いた話です。
この事例のように最近デンタルクリニックのM&A(合併と買収)の話をよく耳にするようになりました。
デンタルクリニックの経営者や経営方針がいきなり変わり、今までと同じような働き方ができなくなった事でその職場を退職せざるを得ないという仲間の声を多く聞くようになりました。
その背景には今日の物価高による材料代上昇や最低賃金の上昇なのでデンタルクリニックの経営が厳しいという先生のお声も多く聞きます。
この場合難しいかもしれませんが、今あなたが働いているクリニックの理念やVisionを従業員全体で把握して、同じ目標を目指していく事がクリニック活性の糸口だと思います。
それと、これからの歯科衛生士に必要なスキルは「従業員メンタリティ」を捨てる事だと思います。これは私が尊敬する歯科衛生士さんのお勉強会で学んだことです。
私達はどうしても「雇われている」という感覚になってしまいがちですが、経営者の立場を考えて、どのように経費が使われているか、経費削減をするにはどうしたら良いかなどを経営者と一緒に考えてみるとクリニックが良い方向に向かうかもしれません。

私の仲間が長く勤められている職場には様々な共通点があります。
その職場の特徴や現場の声などを紹介致します。
長く働ける環境づくりと福利厚生の充実な職場
環境編

以前の医院では、昼休憩が名ばかりで、電話対応や雑務に追われて休めませんでした。
今の医院は、スタッフルームでゆっくり休憩できるので、午後の診療も集中できます!
休憩時間にも関わらず電話対応や雑務に追われてゆっくり休めないという状態のクリニックも少なくありません。
きっちりと休みを取れたら午後のパフォーマンス向上にも繋がります。
福利厚生編
・社会保険完備 健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険など
・有給休暇の取得しやすさ
・産休・育休制度
・住宅手当や交通費支給

今のクリニックは人数が少なくて有給休暇を申請しづらい雰囲気です。
実はこのようなクリニックも存在します。
ギリギリのスタッフの人数で休みづらく、有給休暇なんてとんでもない!のような雰囲気のクリニック、、
スタッフの離職の原因の1つです。

毎年健康診断やインフルエンザ予防接種が無料で受けられる制度があり福利厚生が充実しています!
そのおかげで、自分の健康に対する意識が高まり、体調管理もしやすくなりました。
上記の例以外にスポーツジムやマッサージなど個人の余暇活動を支援する福利厚生もあるようですね。

周りの先輩が産休・育休を取得して復帰しているのを見て、私も安心して長く働けると思いました。
一旦歯科衛生士の仕事を離れてしまうと、復職する際にブランクが不利になる可能性があります。
将来的に歯科衛生士として復職する可能性がある場合は、産休・育休制度は非常に重要な点です。

歯科衛生士として長く働くためには、心身ともに健康でいられる環境が不可欠です。
スタッフ間のコミュニケーションが円滑に取れる職場
日本歯科衛生士会の勤務実態調査報告によると、転職又は現在の勤務先を替えたいと考えた理由として、「同僚との人間関係」が 16.5%となっています。
- 先輩衛生士の過度な圧力
- 仕事のミスをいちいち指摘される
- 陰口を言われたり、冷たい態度、無視
このようなデーターから、スタッフ間のコミュニケーションが円滑な事は、働きやすさに大きく影響します。
定期的なミーティング 情報共有や意見交換の場を設けることで、連携がスムーズになります。
親睦会などのイベント 業務以外の交流を通して、親睦を深めることができます。
相談しやすい雰囲気 困った時に相談できる先輩や同僚がいることは、精神的な支えになります。

報連相がしやすいスタッフ感の雰囲気ってコミュニケーションが円滑に取れて最強ですよね。
教育体制やスキルアップ支援の強化に協力的な職場
常に学び続けられる環境は、歯科衛生士としての成長を促し、後輩も育ちやすいです。
・認定資格取得支援 特定の分野における認定歯科衛生士
・クリニック内の定期的な研修制度 症例相談や感染管理等の研修
・外部研修への参加支援 スタディグループの参加や海外研修
このような教育体制は最新の技術や知識を習得できるので歯科衛生士のスキルアップやモチベーションの向上になります。

私がお世話になっている職場もこのようなスキルアップの支援に協力的です。
学び続けられる事に感謝をしつつクリニックに還元できるよう心掛けています!!

歯科衛生士を辞めたい気持ちは、誰にでも訪れます。
しかし、必ずしも転職や退職が唯一の解決策ではありません。
現状改善のために試したいことをまとめました。
すぐに辞める前に、現状改善を試してみることで、問題解決につながる可能性があります。
辞めたい気持ちと向き合う
感情的な判断ではなく、客観的な視点で考えましょう。
なぜ辞めたいのか、具体的な理由を明確にすることが重要です。一時的な感情で判断していないか、他の歯科医院で働いてみても良いか、歯科衛生士以外の選択肢も考えてみましょう。
今の職場での改善点はないかを考える
問題点を洗い出し、改善の余地があるか検討しましょう。
- 人間関係の改善
- 仕事量の調整
- 研修制度の充実
- 給与の見直し
仲間の意見を聞いてみたり、自己分析をする(⭐️重要度高め!⭐️)
同じ境遇の他の仲間や同級生、先輩歯科衛生士の意見を聞くことで、新たな視点を得られることがあります。
仲間に相談する事で自分の価値を再認識し、自信を持って次のステップに進むことができるように支援をしてくれるかもしれませんし、不安や恐れを乗り越える助けにもなってくれるかもしれません。
また、自己分析や自分の強み、弱みなど、自分自身を理解する事は今後のキャリアアップ活動にとても役に立ちます。
今まで築き上げてきたスキルや経験を生かしながら、今までの経験で何を学んできたのか、今後歯科衛生士としてどう成長していきたいかを具体的に考えてみて箇条書きにしてみてください。
新たな気付きを得られる可能性もあります。

私が転職を考えた時はまず信頼している先輩に相談しました。

歯科衛生士の離職率の高さは、労働環境や待遇、キャリア形成の難しさなど、多岐にわたる要因が絡み合っています。
福利厚生、コミュニケーション、スキルアップ支援など自分にとって重要なポイントを見極めて、理想の職場を探しましょう。
働きやすい職場を選ぶことで、歯科衛生士としてのキャリアを長く続けることができます。
そして、離職問題は決して個人的な問題ではなく、業界全体で取り組むべき課題であると思います。
クリニックが現状を正確に把握し、効果的な対策を講じることで、歯科衛生士の定着率向上と歯科医療の質の向上が期待されます。
お読み頂きありがとうございました。

下記は、歯科衛生士が勝ち組になるための戦略についての記事です。ぜひお読み下さいね!