この記事でわかること
・インプラント周囲炎とは天然歯の歯周病と同じように歯茎が腫れたり膿が出てしまい、炎症症状が続くと骨が溶けて抜けてしまう症状である
・インプラント周囲炎の原因は、細菌、天然歯の歯周病の有無、噛み合わせ、喫煙があげられる
・インプラント周囲炎の予防は主にセルフケアとプロフェッショナルケアである
歯科では歯を根っこごと失ってしまった部位にインプラントを埋め込んで人工的な根を作り、インプラントを土台にして人工的な歯を被せます。
歯科に関わらず医科でも整形外科の人工関節や美容外科で入れるシリコンもインプラントと呼ばれます。
インプラントは失った歯を取り戻す治療ですので天然歯と同じような感覚で咬む事ができます。
インプラント周囲炎とは天然歯の歯周病と同じように歯茎が腫れたり膿が出てしまい、炎症症状が続くと骨が溶けて抜けてしまう症状で、歯周病よりも早いスピードで進行してしまう事が多いのが特徴です。
インプラントの構造は天然歯よりも複雑なのでセルフケアだけでは不十分ですし、磨き残しが見られると、歯石が付着してインプラント周囲炎になってしまいます。
口腔内細菌
歯周病もインプラント周囲炎も原因は口腔内細菌(プラーク)です。
まずプラークがインプラントの上部構造の周りに付着すると歯肉が腫れてきます。歯肉が腫れているだけの状態はインプラント粘膜周囲炎です。天然歯の歯肉炎のような状態です。
さらに感染が歯肉に止まらず骨まで達してしまい、骨が吸収し、重度のインプラント周囲炎になるとインプラントが抜けてしまいます。
天然歯が重度の歯周病になっている
悪性度が高い歯周病菌が口腔内に停滞しているとインプラントにも悪影響です。
噛み合わせが合っていない
噛み合わせが高かったり、インプラントに過剰な力が掛かると負担になってしまいます。
過剰な力が掛かると、被せ物が緩んだり、早期脱落の原因になります。
少しでも噛み合わせに違和感を感じたら咬合調節をしてもらいましょう。
そして、就寝時の歯ぎしり、くいしばりもインプラントに力が掛かりすぎる原因になりますし、自分でコントロールが出来ませんのでインプラント治療を行なった人は就寝時のマウスピース装着が必要となります。
喫煙
タバコに含まれているニコチンは血管を収縮させ、血行不良になります。
チタンが骨とくっ付く時に必要なのが血液です。血液は骨を再生する栄養なので、タバコのせいでインプラント周りの組織が栄養不足に陥り、インプラントと骨がくっ付かない事があります。
更にタバコは免疫力を低下させます。口の中にも多くの細菌が存在しており、免疫力が低下すると歯周病菌に勝てず、歯肉が腫れて、骨が吸収してしまい、インプラントが抜け落ちてしまいます。
セルフケア
セルフケアの基本はブラッシングです。インプラントの構造はとても複雑ですので丁寧なブラッシングを心がけて下さい。
しかし、歯ブラシだけでは不十分なのでデンタルフロスや歯間ブラシも必須となります。
デンタルリンスもバイオフィルムに働きかけてくれますのでとても有効的です。
プロフェッショナルケア
専門的な機械によるケア(PMTC)を受けて頂きご自身では磨きづらい場所のプラーク除去を行います。
PMTCとは歯科医師や国家資格を持った歯科衛生士が(Professional )機械を使い(Mechanical )歯を(Tooth)クリーニング(Cleaning)する略です。
主に歯石取り、バイオフィルム(最近の塊)の除去、歯面清掃で歯をツルツルにする事により、バイオフィルムが付きにくくします。
セルフケアでは手の届かない歯と歯の間や歯周ポケットのプラークもクリーニングする事が可能です。
また、インプラントに歯石が付着してしまった場合も、特殊な機械で歯石を取ります。
外科的な処置
徹底したプラークコントロールを前提として外科的な療法を行ないます。局所麻酔下で歯肉を剥離し、骨から露出したインプラントの粗造なチタンの部分を明示します。
この部分に不良肉芽などの炎症の原因になる物が付着しているので、スケーラーやレーザーを用い機械的に掻爬します。
最後に粗造なチタンの面があると再度プラークが溜まりやすいので、機械的に研摩します。
歯肉を戻しオペは終了です。
インプラント周囲炎に罹ってしまいますと、手術をしてリカバリーしなければなりませんし、最悪の場合インプラントが抜け落ちてしまう事もありますので、ご自身でしっかりとしたセルフケアと、クリニックによるプロフェッショナルケアが必要です。