インプラント患者様に合う洗口液の選び方とおすすめ5選

インプラント患者様に合う洗口液の選び方とおすすめ5選

インプラントを長期的に安定させるための1つとして、プラークコントロールが挙げられます。

インプラントの構造は天然歯よりも複雑なのでプラークコントロールが難しく、プラークを長期に付着をすると歯石になり、インプラント周囲炎になってしまいます。

インプラント周囲炎にならないためには徹底したプラークコントロールが必要です。

プラークコントロールとは歯科医師や歯科衛生士などの行うプロフェッショナルケアを受けて頂く事、そしてセルフケアとして毎日のブラッシングや補助的清掃用具(歯間ブラシ、デンタルフロス)と低刺激で殺菌力の高いマウスウォッシュを併用することが重要となります。

今回はマウスウォッシュにフォーカスを当てたお話です。

なぜインプラントをしたらマウスウォッシュが必要なの?

なぜインプラントをしたらマウスウォッシュが必要なの?のサムネ

マウスウォッシュはあくまでも補助ですが、インプラント周囲は天然歯より清掃が難しく、構造上、バイオフィルムが集積しやすいため、機械的清掃だけでは不十分な場面があります。

 インプラント周囲組織は天然歯より炎症にデリケート

天然歯は歯肉、歯槽骨、歯根膜の3方向からの血液供給があります。

血液には好中球と呼ばれる細菌と戦ってくれる血液成分が存在して、天然歯の場合は歯周ポケットに歯周病菌が侵入した際は防御してくれます。

しかしインプラントの場合は歯根膜が無く、血液の供給が歯肉と歯槽骨の2方向しかないので、歯周ポケットに細菌が侵入しても十分に戦えません。

そのため、インプラントは歯周病のような状態のインプラント周囲炎に罹ってしまうと、抵抗力が弱いため、炎症が起きやすく、歯槽骨の吸収が天然歯よりも早く進行してしまいます。


ですので歯ブラシだけで取り切れないプラーク中の細菌を薬液でしっかり除菌する「化学的プラークコントロール」が欠かせません。

 インプラント周囲に形成される細菌は天然歯の細菌と類似している

インプラント周囲に形成された細菌叢と同一口腔内に存在する天然歯周囲の細菌叢は類似してお
り,歯周病原細菌とされている Porphyromonas gingivalis,Treponnema denticola,Aggregatibacter actinomycetemcomitans などが高い比率で含まれている

2022 歯周治療ガイドラインより引用

上記の通り、天然歯周囲とインプラント周囲には歯周病菌が類似しているため、天然歯と同様のプラークコントロールが必要です。

プラークコントロールは,機械的プラークコントロールと化学的プラークコントロールに分類さ
れる.通常は歯ブラシや補助的清掃用具(歯間ブラシ,デンタルフロスなど)による機械的なプラー
クコントロールが基本であり,機械的プラークコントロールを主体とし化学的プラークコントロー
ルを併用することが有効である.

2022 歯周治療ガイドラインより引用

インプラント患者様へのマウスウォッシュの選び方|失敗しない2つのポイント

インプラント患者様へのマウスウォッシュの選び方|失敗しない2つのポイント
インプラント患者様へのマウスウォッシュの選び方|失敗しない2つのポイント

インプラント治療後のホームケアにおいて、マウスウォッシュの選択はとても重要です。
選び方を間違えると、せっかくのインプラントに負担をかけたり、炎症リスクを高めてしまうこともあります。

ここでは、歯科衛生士が実際に患者様へ指導している観点から、失敗しないマウスウォッシュ選びのポイントを2つにまとめて解説します。

刺激の少ないものを選ぼう

アルコールフリーもしくは含有量の低い商品を選ぶようにして下さい。

特にインプラント手術直後は、歯ぐきが非常にデリケートな状態です。
この時期に刺激の強いマウスウォッシュを使うと、痛みや炎症、治癒の遅延を招く可能性があります。

推奨有効成分を確認しよう

マウスウォッシュにはさまざまな成分が含まれていますが、以下の成分が含まれているか確認すると良いでしょう。

成分主な作用
塩化セチルピリジニウム (CPC)殺菌成分
グリチルリチン酸ジカリウム (GK2)グリチルリチン酸ジアンモニウム抗炎症成分
グルコン酸クロルヘキシジン (CHX)殺菌成分

インプラント患者様におすすめのマウスウォッシュ5選

 インプラント患者様におすすめのマウスウォッシュ5選

インプラント周囲炎などの感染リスクを抑え、口腔内を清潔に保つためには、殺菌力と低刺激性を兼ね備えた製品選びが重要です。

ここでは、歯科衛生士の立場からインプラント治療後の患者様に自信を持っておすすめするデンタルクリニックで購入できるマウスウォッシュを4つ厳選してご紹介します。

製品名使い方主な有効成分製品の特徴注意点
コンクールF
コンクールFの画像
歯磨き後または就寝前に、コップに水約25〜50mLと原液5〜10滴(希釈比約1滴:水25mL程度)を使用。グルコン酸クロルヘキシジン (CHX)


 アルコール含有だが希釈して使用するので安心して使用できる。

高い殺菌力のあるグルコン酸クロルヘキシジン (CHX)0.05%が最大12時間持続。

原液使用不可。
グルコン酸クロルヘキシジンアレルギーの方は使用不可。
モンダミン ハビットプロ
モンダミンハビットプロの画像
歯磨き後に10〜20mLを口に含み20〜30秒すすいで吐き出す。塩化セチルピリジニウム (CPC)
グリチルリチン酸ジカリウム(GK2)
トラネキサム酸(TXA)
ノンアルコールかつ、殺菌成分以外にも抗炎症成分、出血予防成分が含まれているので術後創部への早期治癒効果が期待出来る製品である。購入は歯科医院限定。
歯科用リステリン®
歯科用リステリンの画像
歯磨き後に約20mL(製品によりキャップ目安が異なる)を口に含み、30秒程度すすいで吐き出す。リステリン特有のエッセンシャルオイル
(1,8‑シネオール、チモール、サリチル酸メチル)
ノンアルコール・リステリンのデメリットであった味と刺激をマイルドにしている。購入は歯科医院限定。
Systema SP-T
メディカルガーグル

SP-Tガーグルの画像
水約100mLに本品約0.5mL(6~10滴)を滴下し、よく混ぜて1日数回うがい。セチルピリジニウム塩化物水和物(CPC)
グリチルリチン酸ジカリウム (GK2)
口腔・のどの殺菌・消毒・洗浄。原液使用不可。
バトラー CHX洗口液
バトラーCHX洗口剤の画像
付属カップくぼみに本品0.5mLを入れ、水10mLまで加えて希釈し20〜30秒すすぐ。グルコン酸クロルヘキシジン (CHX)
グリチルリチン酸ジアンモニウム
計量カップ付で希釈しやすい。購入は歯科医院限定。
原液使用不可。
グルコン酸クロルヘキシジンアレルギーの方は使用不可。

よくある質問

インプラント手術後、マウスウォッシュはいつから使えますか?
必ず歯科医師の指示のもとで使用を開始してください。一般的には術後1週間くらいからが好ましいです。
効果的な使い方について教えて下さい。
就寝中は唾液が減り、菌が増殖しやすいため、就寝前の使用が最も効果的です。
マウスウォッシュをすれば歯磨きはしなくても良いのですか?
いいえ、プラークはブラッシングをしなければ落ちません。マウスウォッシュはあくまでもブラッシング後の補助的な役割をするものなので必ずブラッシングを行うようにして下さい。

まとめ

マウスウォッシュはあくまでもブラッシング後の補助として使用するものですが、 使用する事によってインプラント周囲の炎症リスクを下げつつ副作用も回避できます。

今回紹介させて頂いた4つのマウスウォッシュはどれも殺菌作用に優れておりますが、迷ってしまったら定期検診の際、掛かりつけクリニックの歯科衛生士にご相談ください。