インプラント治療は失った歯を取り戻す大変良い治療ですが、リスクもあり、トラブルで悩まれる患者様も多いと思います。
その場合はどうして失敗をしてしまったのか原因をはっきりさせること、骨や歯ぐき、口腔内の環境を整えることで多くの場合はやり直し(再治療)が可能です。

こちらではインプラントが「失敗したかも」と判断される5つの症状と再治療の流れをご説明いたします。
1 手術後2 週間以上痛み・違和感が続く
一般的な術後痛は 1 週間、長くても 2 週間で消退しますが、2週間以上続く場合は何かしらの炎症がある状態です。
痛みが長く続き、炎症があるとインプラント体と骨の結合が阻止されてしまいますので早期の対応が必要です。
「痛みが長引く=失敗確率が高まる」可能性が高い症状です。
🦷手術後2 週間以上痛み・違和感が続く時の再治療の流れについて
2週間たっても続く場合は担当医の再評価(口腔内診査+X線/CT)を受けてください。
再評価はの内容は口腔内診査+X線/CT、口腔内の炎症サイン(発赤・出血/排膿)、インプラントの動揺などをチェックします。
2 上部構造(被せ物)の緩みや破折
インプラントの上部構造が動く場合インプラント体(骨に埋まっている部分)と上部構造(被せ物)を繋いでいる接続部分(アバットメントスクリュー)の緩みが考えられます。
また、上部構造は過大な咬合負荷が掛かると破折する事があります。
🦷上部構造(被せ物)の緩みや破折の再治療の流れについて
アバットメントスクリューの緩みはねじの再締結や適合調整を行い、ほとんどの場合は当日で解決します。
上部構造(被せ物)の破折は型取りを行い、再度作るので2週間程度で装着できます。
3 インプラント周囲炎
インプラント周囲炎の初期症状は歯肉からの出血です。そして徐々に進行して、腫れて膿が出てしまいます。
さらに進行すると骨吸収が進み、噛めなくなるのでインプラント撤去が必要になるケースもあります。
🦷インプラント周囲炎の再治療の流れについて
インプラント周囲炎による炎症や骨吸収がみられる場合は、インプラントの再手術が必要となります。
インプラント抜去→骨造成→再埋入が再治療全体で数か月〜1年以上かかることがあります。
4 しびれ・神経麻痺が出ている
特に下顎の手術時にトラブルになりやすい例です。
下顎には下歯槽神経という太い動脈が走っており、手術時に下歯槽神経に触れてしまうと痛みが続いたり、痺れが出てしまう可能性があります。
🦷しびれ・神経麻痺が出ている場合の再治療の流れについて
痺れが続く場合はレントゲン撮影やCT撮影を行い、インプラント体の圧迫が原因ならばインプラント体の抜去を行います。
必ず掛かりつけのクリニックに相談してください。
一般的に薬物療法が行われ専門医に診断を依頼する場合があります。
知覚麻痺に対する治療として,投薬(ビタミン B12 製剤の長期投与),星状神経節ブロック(専門医へ依頼)を行う.
歯科インプラント治療指針より引用
5 鼻づまりや頬の痛みの症状
上顎臼歯部のインプラント後に片側の鼻汁・鼻づまり・頬の痛みがあれば、歯性上顎洞炎の可能性が考えられます。
🦷鼻づまりや頬の痛みの症状の再治療の流れについて
鼻づまりや頬の痛みの症状がある場合はCT画像診断→薬物療法→インプラント体の抜去の必要があります。
また、耳鼻科連携を含めた評価が必要な場合もあります。
症状別「再治療・費用・期間」クイック表

かずなか歯科クリニックの再治療の料金表です。参考になさって下さい。
症状 | 主な再治療 | 目安費用 | 期間の目安 |
---|---|---|---|
スクリューの緩み | 画像診断→再締結 | 数千円〜 | 当日 |
スクリューの破折 | 画像診断→再締結 | 数千円〜1万円前後 | 数週 |
上部構造(被せ物)の破折 | 型取り | 数万円 | 数週間 |
インプラント周囲粘膜炎 | 画像診断→外科処置またはクリーニング・薬物療法 | 数千円〜1万円前後 | 2〜4週で再評価(症状によってはそれ以上かかることあり) |
インプラント周囲炎(抜去が必要な場合) | 画像診断→抜去→骨造成→再埋入(外科処置) | 再埋入まではおおよそ45万円/本〜 | 抜去〜再埋入まで数か月(5〜12か月以上) |
しびれ・神経麻痺 | 画像診断・神経検査→薬物療法又は専門医紹介 | ケースバイケース | 週〜月単位 |
鼻づまりや頬の痛みの症状 | 画像診断→薬物療法又は耳鼻科医連携を含めた評価が必要 | ケースバイケース | 週〜月単位 |

再治療は多くの場合で可能ですが、難しい場合もあります。
ここでは、やり直しを難しくする代表例と、その際に検討できる治療方法を説明します。
喫煙者の方
タバコに含まれているニコチンは血管を収縮させ、血行不良になります。
インプラントの殆どはチタンという素材で出来ています。チタンは生体親和性が高く、身体の一部と認識して骨とくっ付きます。
チタンが骨とくっ付く時に必要なのが血液です。血液は骨を再生する栄養なので、タバコのせいでインプラント周りの組織が栄養不足に陥り、インプラントと骨がくっ付かない事があります。
また、タバコは免疫力を低下させるので、歯周病菌に勝てず、歯肉が腫れて、骨が吸収してしまい、インプラント周囲炎になる可能性が高まります。
全身疾患がある方
以下の全身疾患をお持ちの方はインプラントの再治療が難しい場合があります。
- 心臓や脳血管の疾患
- 骨粗しょう症
- 糖尿病
顎の骨が少ない方
顎の骨が極めて少なく、骨造成が難しい方はインプラント以外(入れ歯やブリッジ)の治療を検討して頂く必要があります。
入れ歯

部分入れ歯は周りの歯に金属のバネをかけて固定します。
保険適用で費用を抑えられるのがメリットですが、バネが目立ったり、見た目が自然ではないというデメリットもあります。
見た目や薄さなどに考慮した保険外の入れ歯もあります。
ブリッジ

ブリッジは基本的には固定式となります。両隣りの歯を削って橋渡しで歯を補います。
ブリッジも入れ歯同様、保険と保険外の治療が選べます。

痛みや違和感が続くのに説明に納得できない、、、そんな時は、一人で抱え込まず段階的に相談先を切り替えましょう。
まずは手術をした歯科医院の担当医に相談
失敗した原因を特定するための再評価を受けることが先決です。
臨床所見(出血・膿の有無、ポケットの深さ)
画像検査(パノラマレントゲンや必要に応じてCT)
これらの再評価、チェックを踏まえて再手術か返金かをを確認します。
また、費用や返金は自由診療の契約内容次第なので、同意説明書・契約書・領収書で確認しながら話し合ってください。
セカンドオピニオンを受ける
今の治療や説明に不安があるときは、別の専門医の意見=セカンドオピニオンを受けましょう。
転院が前提ではなく、「ほかの医師ならどう診て、どんな治療案になるか」を確認する手段です。
セカンドオピニオンを受けるには担当医に伝えましょう。画像(レントゲン/CT)や記録を用意してもらいやすく、セカンドオピニオン先のクリニックの重複検査を減らせます。
なお、費用は保険外(自費)で医院ごとに異なるのが一般的です。
国民生活センターまたは消費者センター など
費用や返金で困ったら、消費者を守る公的機関の国民生活センターや各地の消費生活センターに相談しましょう。
局番なし「188(いやや)」へ電話をすると最寄りの窓口につながり、地方公共団体が設置している身近な消費生活センターや消費生活相談窓口をご案内していただけます。
インプラントの説明に納得できない時の第三者相談先として役立ちます。

インプラントの「失敗」は、ひとつの理由だけで起こるとは限りません。ここでは主な原因4つを簡潔に解説します。
健康状態(喫煙・糖尿病・骨粗鬆症)
インプラント治療を行う場合、糖尿病や骨粗鬆症などの全身疾患や喫煙者はインプラントの早期脱落の原因となります。
時前の診査診断がしっかりと行えていなかった
インプラント手術は事前の診査診断がとても重要です。
レントゲンとCT撮影で骨の厚みや高さ、神経までの位置を確認してプランニングを行います。
これらの診断を誤ってしまうと神経を損傷して出血が出たり、痺れが出てしまうトラブルになります。
隣接歯の状態も非常に重要です。隣接する歯に根の病気が見られたり、歯周病が見られたりする場合はそちらの治療が優先となります。
またインプラント治療を終えたらメンテナンスがとても重要となります。インプラント治療を始める前にメンテナンス期間も確認をしましょう。
手術中に問題が起きてしまった
手術時の埋入角度と深さが適切ではない場合、骨とくっ付かなかったり、骨からチタンが貫通してしまう可能性があります。
手術中はドリルを回転させながら骨に穴を開けます。その際にオーバーヒートを起こしてしまうと骨がダメージを起こし、上手くチタンと骨がくっ付かない可能性があります。
金属アレルギーだった
ほとんどインプラント体はチタンが使用されています。
チタンは生体親和性が高いのでほとんどの方はアレルギーが出にくいですが中にはアレルギーが出る方もいらっしゃいます。
心配な方はアレルギー検査を受けて頂く事をお勧め致します。

失敗を繰り返さないためのは「正しいケア」と「正しい治療方針がポイント」です。
ここでは「自分でできること」と「医院でやること」を明確にしていきます。
良いクリニックを選ぶ
- 日本口腔インプラント学会などの認定医/専門医がいる
- CT(3D)や衛生環境などの設備が整っている
- インプラントの症例数・実例写真を開示してくれる
- 費用・期間・リスク・保証など時前に説明があり、文書で渡してくれる
術前に全身状態や口腔内状態を整える
- 禁煙をする
- 糖尿病の患者様は血糖値のコントロールをする
- 歯周病の治療やプラークコントロールをしっかりと行う
術後のメンテナンスの重要性をしっかりと認識する
- プラークコントロールの徹底する(歯ブラシ+歯間ブラシ/フロス/マウスウォッシュ)
- クリニックで定められているメンテナンスに行く
- かみ合わせ・歯ぎしり対策でマウスガードを使用する
インプラント治療は失った歯を取り戻す大変良い治療ですが、リスクもあります。
インプラントの「失敗」は、早く気づいて正しく対処できれば、やり直しや再治療で十分に回復が見込めます。
「手術後2 週間以上痛み・違和感が続く」
「上部構造(被せ物)の緩みや破折」
「インプラント周囲炎」
「しびれ・神経麻痺が出ている」
「鼻づまりや頬の痛みの症状」
このような症状が出た場合はまずは担当医に連絡をしましょう。
また、ご自身の生活習慣を改める必要があったり、内科医との連携が必須の場合もあります。